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矮小

井の中の蛙

ユーリ!!! on ICE 第2話 技術寄りスケオタ的注目ポイント

第2話は割とコメディ寄りでした……が、それでもフィギュアスケート的な注目ポイントがいくつかあったので自分の備忘録代わりに記録しておきます。Twitterでも他のスケオタの皆さんが思い思いにツイートしていたのを見ましたが、とりあえずフィギュアスケートの技術面についての要素だけ記載していきます。3点しかないのにいつの間にか文量がめっちゃ増えてしまいましたが、解説用の動画は今回もたくさん置いているのでそちらを見ながらゆっくり読んでいってください。

イーグルから2A

(2Aって何? と思った方は前回の記事をご覧ください ヴィクトルの演技を見てジャンプを見分けられるようになろう - 矮小

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プリセツキーがアイスキャッセルはせつに到着してリンクインした後のニキフォロフの練習シーン。上の画像のように両足を180度広げて滑る形を「(スプレッド)イーグル」と言い、現在のフィギュアスケートで言うところのムーブズ・イン・ザ・フィールド(一定の姿勢を保ったまま滑る動作)の一種となっています。単なる要素*1間のつなぎやコレオシークエンス、そして上のシーンのようなジャンプ前の予備動作にも用いられます。

少し余談となりますが、フィギュアスケートの技術要素にはそれぞれに対して-3から3までのGOE (Grade of Execution)という出来栄え点が考慮され、要素ごとに設定された基礎点に加えてGOEによる点が加点・減点されます。GOEの点数をそのまま加えるのではなく、要素ごとにGOE1点あたり何点加点・減点というルールが決められています。実際の点数表(競技規則ではScale of Value, SOVと呼ばれています)を見てみたい方はCommunication No. 2000を開いてみてください。

www.isu.org

また、ジャンプ・ステップ・スピンのそれぞれについて、「こういうことをしたら・こんな感じだったらGOEに考慮しましょう」というチェックリストがあります(これも上のファイルに記載されています)。で、今回取り上げたジャンプ前のイーグルは、そのチェックリストの中の “clear recognizable steps/free skating movements immediately preceding element” つまり「ジャンプ直前に明確で分かりやすいステップ、またはフリースケーティングムーブメントを行う」に該当するというわけです(たぶん)。

GOEの詳しい採点方法についてはこのサイトが最新のはず。

tororinnao.info

で、これをジャンプ前だけでは飽き足らずジャンプ後にまで付けてしまったのが2シーズン前の羽生結弦

youtu.be

動画は2014年グランプリシリーズ中国杯ショートプログラム。演技最初の3Aはジャンプ前後にイーグルを付けています。姿勢が制限されるというだけ(それでも難しいですが)のジャンプ前ならまだしも、ジャンプ後にイーグルを付けるためには極めてクリーンに着氷してその後のスケーティングの流れを作ることが必須となるので本当に大変なことです。また、ジャンプ後のイーグルは、GOE加点要素の “good extension on landing / creative exit” に該当するというメリットもあります。ちなみに、この羽生のイーグルでジャンプを挟む一連の動作はスケオタに「イーグルサンド」と呼ばれるようになりました。

イーグルから3Aの実施を集めた動画がこちら。というかこんな動画あるのか……。

イーグル - 3A 集 by あみの スポーツ/動画 - ニコニコ動画

ちなみにイーグルの状態に加えて膝から上を一気に後ろに反らした状態を「クリムキンイーグル」と言います。日本人でよくやっているのは宇野昌磨

www.youtube.com

動画は2015年グランプリファイナルのフリースケーティング(オペラ『トゥーランドット』より)。演技終盤、『誰も寝てはならぬ』のクライマックスをクリムキンイーグルで魅せます。

クリムキンやべえ!!!!! と思ったあなたはこちらへどうぞ。

www.nicovideo.jp

さらに余談。イーグルは両足のスケーティングラインが揃っていますが、これを前後にずらすと「イナバウアー」になります。そうです。イナバウアー」はスケーティング時の足の形を指す言葉であり、上体を反らしながら滑ることを言うのではありません。今日この記事を見てくださった方はお願いなのでこれだけでも覚えて離脱していってください。ちなみに上体を反らしている部分は「レイバック」と言います。上体を反らしていれば大体何でもレイバックなので「レイバックスピン」もあります。

荒川静香のレイバックイナバウアーがこちら。

www.youtube.com

動画は2006年トリノオリンピックフリースケーティングより。演技終盤、『誰も寝てはならぬ』の主題に入ったところでレイバックイナバウアーを披露しています。足を180度に開き、さらに脚を大きく前後にずらしているのが分かると思います。

コンパルソリー

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第2話Bパート中盤、勝生がリンクで練習していたのは「コンパルソリー」。

そもそも「フィギュアスケート」は、直訳すれば「図形のスケート」。フィギュアスケートが競技として始まった時は、スケート靴のブレードのエッジに乗って、いかに氷上に綺麗な図形を描けるかを競っていました。これが実際にフィギュアスケート競技会に導入された時の種目名が「コンパルソリーフィギュア」、日本では「規定」とも呼ばれていました。1990年を最後に競技種目としてのコンパルソリーは完全に廃止されましたが、そもそも氷上で綺麗な図形を描くことはすなわち上質なスケーティングにつながるため、現在でも練習の際にコンパルソリーのようなことが行われています。このコンパルソリーの練習によって一気にフィギュア界のスターダムへと駆け上がっていったのが日本の町田樹

インタビュー 町田 樹|キヤノン・ワールドフィギュアスケートウェブ

ちなみに当時のコンパルソリーの競技風景はこちら。言ったら悪いですが競技風景としてはだいぶ地味です……。

www.youtube.com

えばらさんのおかげで勝生のコンパルソリーに気付きました。ありがとうございます。ちなみにこのシーンの時僕はTwitterを見てました(集中しろ)。

『愛について』2つの編曲

作中ではEros/Agapeと同じ曲について2つの編曲が用意されていますが、今年は偶然似たようなプログラムに挑戦する選手がいます。それは浅田真央

www.youtube.com

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曲はどちらもバレエ音楽『恋は魔術師』より、ファリャ作曲のRitual Fire Dance。ショートプログラムはピアノ編曲、フリースケーティングはオーケストラ編曲になっており、ショート最後のポーズがフリー冒頭のポーズと同じになっているところからも2つ合わせて1つのプログラムになっていることが分かります。膝をやっているようなニュースを見かけて心配ですが、今年も浅田の良い演技が見れたらいいなと思うのみです。

*1:フィギュアスケートで言う「要素」は「技術要素」、つまりジャンプ・ステップ・スピンのことを指します