読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

矮小

井の中の蛙

YOI#5で勝生が出したSP94.36点を逆算してみた

Minami's Boogie良かったですね。あれぐらいの歳の選手がああいう曲で演技するのを見るのはとても楽しいです。

フィギュアスケートの基本的な技術要素については先週までで終わりにして、今週からは(自分の勉強も兼ねて)ルールのさらに細かいところまで突っ込んで見ていきたいと思います。今週はショートプログラムの採点ごっこに挑戦したいと思います。例のごとく間違いに気付かれた方はブログのコメントや Yousack!!! on ICE (@antefest) | Twitter までお知らせください(ブコメは通知が来ないので気付きません😭)まだフィギュアスケートを見始めたばかり〜という方は過去記事からどうぞ。

yousack.hateblo.jp

StSqとかFSSpとか何のこと? という方は フィギュアスケート要素検索 が良くまとまっていてオススメです。

本題

ユーリ!!! on ICE 第5話では勝生勇利が本編中の中四国九州選手権大会のショートプログラムで94.36点という点数を出していました。参考までに以下が現実世界の男子シングルショートプログラムの自己ベストランキングです(出典:http://www.isuresults.com/isujsstat/pbsmsp.htm )。

f:id:Nagoyan:20161105001004p:plain

世界8位に入りますね……。参考までに、この画像で8位の宇野昌磨の15-16四大陸選手権のショートのリザルトを見てみましょう(出典:http://www.isuresults.com/results/season1516/fc2016/fc2016_Men_SP_Scores.pdf)。

f:id:Nagoyan:20161105002213p:plain

ショートで90点台と言うと上のランキングを見ても分かる通りかなり高い点数ではあるので、本編を見たときは「ここでそんな出してくる?」と思ったのですが、4回転1本でそれが微妙な出来になっても他の質の高い技術要素とPCSの高さで割と取り返せるっぽいですね。

ちなみに演技動画がこちら。

www.youtube.com

ということで、試しにどんな感じの採点をすれば勝生のショートが94点ぐらいになるのかを計算してみましょう。ショートプログラムの要件(分からん人:YOI#3で覚えるフィギュアスケート技術要素(スパイラル・スピン基本姿勢・ショート構成) - 矮小 )と合わせて中四国九州選手権大会でのショートの演技構成を確認してみます。

  1. StSq(ステップシークエンス)
  2. CCSp(足換え必須かつフライングスピンとは異なる姿勢のソロスピン)
  3. FSSp(フライングエントリーのソロスピン)
  4. 3A(2Aまたは3A(単独)、ここから後半でジャンプの基礎点は1.1倍)
  5. 4S(ステップなど*1から直ちに単独ジャンプ)
  6. 4T+2Tx(ジャンプコンビネーション)
  7. CCoSp(スピンコンビネーション)

スピンは最後のスピンコンビネーションしか描写がなかったので、第3話で披露された演技を参考に2.と3.を埋めてみました。3.のFSSpはまだ本編では見られていませんが、まず2.がCCSpなので3.をフライングエントリーのソロスピンにしないとショートプログラムのスピン要素の要件に合いません。さらに3.で選べるスピンは2.とは基本姿勢が異ならなければならないのでFSSpとFUSpのどちらかで、まあシニアだし勝生はスピンとステップが得意な設定があるし……ということでFUSpより基礎点が高くて実際に実施されることも多い*2FSSpにしておきました(今後の放送で確定するかもしれません)。

基礎点を計算する前に、ステップシークエンスとスピンのレベルを確定させなければいけません。面倒なのでとりあえず超適当に決めます(ので、「とりあえず」みたいな枕詞を置いているところについてはあまり信用しないでください。あくまでもお遊びということで……)。

まずステップシークエンス。ステップシークエンスでレベル4を取るためには定められた4つの要件を全て満たさないといけないので、その中の一つである「異なる足で難しいターン・ステップの3連続で異なる組み合わせで1回ずつ行う」*3という要件も要求されます。本編の演技を見てもそれをこなそうとしてる感じはする(しさすがに宮本賢二先生もレベル4が取れるように作っているはず、たぶん、信じてる)のでとりあえず全てのレベル要件を満たしたということにしてStSq4にしておきます。

次にスピン。スピンのレベル要件は(レイバックスピンを除いて)11個もある上にそのうち9個は1つの演技で2度以上繰り返し使えないのでカウントするのが超大変です。今回は7.のCCoSpだけ映されたのでこれだけレベルを検討してみます。他のスピンについては面倒なのでとりあえず全部レベル4にしておきます(よいこのみんなは真似せずにちゃんとレベル要件を確認してね!)

スピン・ステップのレベル要件についてはScale of Valueの後ろの方に載っています。各要素の点数表もこれの前半に載っているので適宜参照してください(Related DocumentsのISU Communication 2000)。

www.isu.org

難しい姿勢の定義と参考写真はテクニカルパネルハンドブックに載っています (Technical Panel Handbook Single Skating)。

Single & Pair Skating - ISU

日本語版はこちら(国内規程→ISUハンドブック→シングル→テクニカルパネル→日本語)。

|Japan Skating Federation Official Results & Data Site|

それでは勝生のCCoSpを参考に、スピンのレベルを上げる要素を確認していきましょう。最初の姿勢は左足でキャメル。

f:id:Nagoyan:20161105010645p:plain

ホップを挟んで……

f:id:Nagoyan:20161105010751p:plain

キャメル・シット・アップライトのどれでもない非基本姿勢。非基本姿勢は1つの種類をこなすごとにレベルが1つ上がります(ただし非基本姿勢や、基本姿勢の「難しい姿勢」は、レベルを上げる要素としては1つの姿勢につき1回までしか演技内では使えません)。これでレベル1を獲得しました。また、スケーティングレッグは1個前の画像と同じ左足のままなので、“Jump within a spin without changing foot”(スピン中に足換えを伴わないジャンプ)を満たしました。これでレベル2。

f:id:Nagoyan:20161105011614p:plain

足換えしてシットスピン。ここは普通の姿勢です。

f:id:Nagoyan:20161105011827p:plain

姿勢を少し変化して左足を手で掴みます。左足が後ろに出ているのでシット・ビハインドの「難しい姿勢」です。これでレベル3。

f:id:Nagoyan:20161105014103p:plain

最後にアップライトスピン。氷上に両足を乗せて回るクロスフット・スピンはアップライトスピンの「難しい姿勢」(アップライト・ストレート)として認められます。これでCCoSp4になりました。めでたしめでたし。

f:id:Nagoyan:20161105014116p:plain

ジャンプについてはGOEを計算してみましょう。3つやってるとまた文量が大変なことになってしまうので、とりあえず上手く行かなかった4Sだけ。4Sはそもそもコマ送りして確認すると回転不足な感じがしました(内心「回りきってる! とは言ってましたが……」)。これが離氷点。

f:id:Nagoyan:20161105014219p:plain

そして着氷点。

f:id:Nagoyan:20161105014609p:plain

YOIのジャンプシーンは、アップで映される場合は基本的に離氷時が右向き(上手向き)になるようにカットが作られている感じがするので、カメラが同じ向きのまま選手を映しているとすれば右向きで着氷しなければいけません。2枚目を見ると回転が1.5/4足りないような感じがするので回転不足(不足分が1/4以上1/2未満)ですかね。僕の解釈が違うかもしれませんがとりあえずそういうことにしておきます。回転不足の場合は点数表のV列の点数が使われるので、基礎点がだいたい0.7倍ぐらいになります。さらに回転不足の場合はGOEの減点要素の “Under-rotated (sign <): -1 to -2” に該当します。

f:id:Nagoyan:20161105024811p:plain

またこの4Sは着氷した時に片手をついてしまいました。これはGOE減点要素の “Touch down with one hand or free foot: -1” に該当します。 GOE加点要素については “clear recognizable steps/free skating movements immediately preceding element” にギリギリ該当しそう。プラスのGOEについては定められた要件を2個満たすたびに1点上がっていくのでここでの加点は付きません。合わせると-2点から-3点になりますが、ここではとりあえず-2にしておきます。

他のジャンプについてはなんとか回転が足りてそうだったのでそのままにしておきます。

ここまで考えた技術要素の基礎点を全部足してみます。4S以外のGOEはとりあえず全部0にして一旦基礎点だけ計算してみます。

  1. StSq4: 3.9
  2. CCSp4: 3.2
  3. FSSp4: 3.0
  4. 3Ax: 8.5 x 1.1(演技後半ボーナス)= 9.35
  5. 4S<x: 8.1(“<”なのでV列の点数)x 1.1 - 2.4 (GOE-2)= 6.51
  6. 4T+2Tx: (10.3 + 1.3) x 1.1 = 12.76
  7. CCoSp4: 3.5

全部足すと42.22点になりました。合計は94.36点で、考えうる最大の演技構成点は 94.36 - 42.22 = 52.14点。男子シングルの演技構成点は50点が満点なので、……あれ? さすがに4S以外のGOEを考慮しなかったのは低く見積もりすぎたようです。ということで、超適当ではありますが、イーグルから入って着氷後の流れも良かった3Aと得意なStSq4をGOE+3に、それ以外の要素はGOE+2にしてみます。

  1. StSq4: 3.9 + 2.1 (GOE+3) = 6.0
  2. CCSp4: 3.2 + 1.0 (GOE+2) = 4.2
  3. FSSp4: 3.0 + 1.0 (GOE+2) = 4.0
  4. 3Ax: 8.5 x 1.1(演技後半ボーナス)+ 3.0 (GOE+3) = 12.35
  5. 4S<x: 8.1(“<”なのでV列の点数)x 1.1 - 2.4 (GOE-2)= 6.51
  6. 4T+2Tx: (10.3 + 1.3) x 1.1 + 2.0 (GOE+2)*4 = 14.76
  7. CCoSp4: 3.5 + 1.0 (GOE+2) = 4.5

全部足すと52.32点になりました。94.36 - 52.32 = 42.04点で、これは上で挙げた宇野の四大陸選手権ショートのPCSより少し低いぐらいの点数です。GOEをかなり適当にモリモリ加点しましたが、4回転が2本入ってるのもあるし、もうちょいGOEを下げてPCSを上げれば意外とかなりそれっぽい点数になるかもしれません。

ところで答え合わせできる資料はいつ公開されるのでしょうか……。グッズがたくさん出ていることはアニメオタクとしては嬉しいですがスケオタ的にはやはり詳しいリザルトが見たくなってしまうのがサガですね。

更新履歴

2016-11-06 00:40頃 不正確な記述をしていたので「自己ベストランキング」という表現で明確化しました。まあ(国内大会は割と点数が出る傾向があるとはいえ4S降りられたら普通にこれぐらい出そうだし)トップ10に入ってきそうというのは確かですが……。

*1:ジャンプ前のステップ全然分かんね〜〜〜と思ってましたがよく見るとインサイドイーグル→モホーク→4Sということで要件を満たしてそう

*2:カナダのケヴィン・レイノルズはフリーでではありますがスケート・カナダでFUSpしてました

*3:言葉で伝えるのが非常に難しいですが、例えば上で出した宇野の演技動画の2:30-2:32あたりで1, 2, 3って感じで一定のリズムに乗ってターン(ロッカー?→カウンター?→ツイズル)してるやつがこれの1つです

*4:ジャンプコンビネーションのGOE加減点については、その係数が一番大きいジャンプのもののみを考慮します。この場合は4TのGOE係数だけを見る